奇妙なラーメン屋の屋台

これは一晩の悪夢のような話である

 

 

 

 

妖怪の山で丁度三時を回ったぐらいの話

 

赤いマントを羽織った隻眼の白狼天狗が木にもたれかかり休んでいた

彼の名は双刃といった

 

「さて…今日は何にしようかなっと」

彼はこの時間から夕食に何を取ろうかと考えていたのだ

というものの最近はましなものも食べていなかったらしく今日もそうだろうと思っていた

 

お金があるなら里に下りてなんか食べるのだがいかんせん彼には稼ぐ手段が無かった

 

「…はぁ」

野草をつまみながらこの状況にため息が出る

 

「誰だ?」

陰に隠れている気配を感じ取りそこに石を投げる

こつんと当たりドサッと倒れる音がする

 

久々に肉が食えるのかなと期待しながら音のするところを覗くとそこには男の白狼天狗が伸びていた

 

「なんだ、ただの白狼か…」

そうは言いつつも目が覚めるまで彼は見守っていた

 

「う、う~ん…」

彼が目を覚ました、事情を聞くとどうやら双刃の事を侵入者と勘違いしたらしい

それで後をつけていたとか。こちらも自分のことを話すと納得してもらえたようだ

 

「す、すいません…俺ここに配置されてまもなくてよく知らなかったんすよ…」

「…まぁこの山で俺の事を知ってるやつなんてあんまりいないしな」

 

新人の白狼はその後に必死に謝ると更にお詫びをさせてほしいと言った

 

「じゃあなんかおいしいもの食べさせて」

「おいしいもの…ウーン…あっそうだ」

彼はつづけて言う

 

「この辺にぃ~、うまいラーメン屋の屋台ぃ、来てるらしいんすよ」

「あ、そっかぁ行きてえなぁ」

彼にとって味はなんでもよかった、まともにお腹に入れれるものだったら

 

「行きましょうよ。じゃけん夜行きましょうね~。」

「おっそうだな。じゃあ夜ここに集合な」

そう約束し彼らは別れた

 

 

~夜~

 

双刃が目を岩に座りながら白狼を待つ

しばらくすると慌てて彼はやってきた

 

「そんなに慌ててどうした」

遅く来たことを咎めるわけではなかったが彼が何故そんなに慌てているのか彼は気になった

彼は自分の通ってきた道を指さす

 

ドシッ ドシッ と大きな足音が近づいてくる

それにびっくりして彼は双刃の後ろに隠れる

それと同時くらいに大きな熊のような生物が茂みから飛び出してくる

えらく鼻息が荒かった

 

「気を付けてください!こいつすごく硬いっすよ」

彼は折れた剣を双刃に見せる

彼は動揺することは無かった、謎の生物は彼に襲い掛かる

 

彼を引っ掻こうとしたその時その生物の両腕が斬りとばされた

 

空中を回転しボトッと地面に落ちる、そしてその生物は倒れた

双刃の両手にはそれぞれ同じ形をした刀がいつの間にか握られていた

 

刀についた血を彼は拭き取る

その様子をただ白狼天狗は茫然と見ることしかできなかった

 

「さて、行こうか」

「あ、はい行きましょうか」

 

双刃が刀を収めると白狼は案内を始める

彼に案内されると山の麓まで下りてきていた

すると見るからにラーメン屋の屋台というようなものがそこにあった

 

暖簾を潜ると一人しかいない店員が暇を持て余し本を読んでいた

そいつも女の白狼天狗だった、そして双刃は彼女に見覚えがあった

 

「お前白夜…白夜じゃないか!」

「その声まさか双刃!?」

白夜と呼ばれた彼女はたまげた様子で椅子からひっくり返る

彼女は立ち上がると互いに見つめ合う、二人とも色々変わっていたが一目でわかった

二人はしばらくの間再会を喜ぶ

 

「二人は…どういう関係なんですか?」

「まぁ友人だよ」

「そうそう」

 

双刃と白狼は席に着く、白夜は二人にお水を汲んだコップを差し出す

メニューの代わりに目の上にラーメンの一覧が書いてあった

 

「ところで今までどこに行ってたんだ?」

双刃が疑問をぶつける、ある日突然消えた白夜、空白の数年間などについてだ

「まぁ修行に出てたんだよね、こっちの修行もだしあっちの方もね!」

あっちのほうとは多分武術とかの事だろうと思いつつ双刃は水を飲む

 

「ところで注文は何にするかい?」

期待するような表情で白夜は客である二人を見る

双刃は一覧を端から端まで見回す

 

お汁粉炭酸ラーメン フルーツラーメン ラーメン抹茶マウンテン 

おでんラーメン RBGBBBラーメン 巨神麺 中華メロンソーバ

と書いてあった

 

「いやぁ…ここまでレパートリーを増やすのは苦労したよ~」

やりきった顔をしながら白夜は言った

客である二人は互いに見合う

 

「とりあえず俺は普通のラーメンでいいかな…」

白狼がラーメンを頼むと双刃も便乗する、すると白夜は首をかしげる

どうやら一覧からちゃんと名指しで注文をしないといけないようだ

 

「…どれにしようか」

前に見た時には一つしかなかったメニューが一気に増えていたことに彼は困惑していた

とりあえず彼の思考の中からはお汁粉炭酸ラーメンは除外する

 

やっぱり一番無難なのはおでんらーめんか…?

 

「この中で一番おいしいラーメンを頼む……二人分で」

隣の白狼がキリッと頼むとせっせと白夜は作り始める

双刃が自分の分も勝手に頼まれていたことに気が付いたころにはもう遅かった

 

「おい!なんで俺の分まで勝手に頼んだんだ!」

「え…だっておいしいものが食べたいって言ったのはあなたっすよ…」

確かにそうだけれども…と後悔しながらラーメンが出来るのを彼らは待った

 

「はいっ!出来たよあたしの最高傑作!」

そう言われて二人に出されたのはいたって普通…に見えるラーメンだった

 

「ふ…普通だ…」

割り箸を割り麺をスープから引きずり出す

そして口の中に運ぶ

 

 

「お、おいしい!なんてことだ…」

あまりの意外さに双刃は思わず涙をこぼす

空腹の中食べたからだろうか、いや…友の成長を喜んでいるからであろう

 

二人はその後も黙々と食べすすめていきスープも残さず完食をした

 

「ふぅ~…食った食った」

「じゃあ俺代金だけ払っておきますんで」

白狼は二人分の料金を置くといそいそと山の中に帰って行った

 

「にしてもお前が普通のラーメンを作っていたとはな…」

「む…前々からちゃんと作っていたよ、皆が頼むから変わったのしか作らなかったの!」

 

 

ふと双刃は思った

実はおいしかったけど俺が食べたのは普通のラーメンじゃなかったんじゃと

 

「まぁ普通じゃない具材は使用したけどとりあえず何も起きないみたいだね」

その事を質問するとそう返ってきた、白夜は少し残念そうだった

彼は嫌な予感がした

 

耳と尻尾がピクンッと逆立つ

おっと白夜は期待の眼光を輝かせる

 

「な…何が起きて…いるんだ…!」

身体を震わせながら訴える、その顔は赤く染まり目からは自然と涙が出る

白夜の視線に気が付き目線を合わせ無いようにうつむく

 

やがて身体の震えは止まるが彼はそこに明確な違和感を感じていた

 

「大丈夫?」

「大丈夫なわけが…」

顔を上げると白夜に鏡を向けられる、そこに映ったのは間違いなく自分なのだが

目は柔らかく、頬も少し膨れている別人のような白狼天狗が映っていた

 

「うぅ…どうするんだよこれ…」

声のトーンも随分と上がっておりまさしく性別が変化していた

「ま、まぁ三日もすれば戻るから大丈夫だって安心しなよ!」

肩をポンポン叩くとビクンと双刃は反応をする、息も荒かった

 

立ち去ろうとするがバランスを崩し転んでしまう

 

「…ま、まぁこうなったのも責任はあたしにあるわけだし元に戻るまで面倒見てあげるからさ、元気だした!」

「それこそ不安なんだが…」

 

手を差し伸べる彼女にそうは言ったもののこんな状態で出歩くことの方が危険だと思い

結局その案に乗っかることにした

 

その後三日三晩食事がラーメンだったためある意味ラーメンは双刃のトラウマとなった

 

 

 

おわおわり

 

 

おまけ

双刃から見たそれぞれのラーメン評価

 

「お汁粉炭酸ラーメン」…知る人ぞ知る全ての元凶、食べた人は性別が変わる

            温まった炭酸が絶妙にまずいと言われている

 

「フルーツラーメン」…実はフルーツラーメンは実在するらしい

           だがスープが味噌なのは流石にね…体に変化はない

 

「ラーメン抹茶マウンテン」…甘かったり苦かったりする、あと量が多い

              緑色の麺は結構おいしそうだと思った。体に変化なし

 

「おでんラーメン」…凄い名前通りのラーメン。おでんの具材と汁の中にラーメンが

          入っている、パンにおでんを入れるよりかはまだ普通な発想だ

          体に変化がないあたり本当の普通のラーメン

 

「RBGBBBラーメン」…レッドブルーグリーンビーンズラーメンの略称らしい

           見た目は普通のラーメンだがスープの中に特殊な豆が三つ

           入っているらしくランダムで身体に変化が起こるらしい

           味は美味しいが二度と食べたくなくなるラーメン

 

「巨神麺」…その聳え立つ程の量の麺はまるで巨神を彷彿させる

      未だに完食者が居ないらしい、というか上の方はスープの味がなく辛い

 

「中華メロンソーバ」…メロンソーダに中華そばの組み合わせ、第二のお汁粉炭酸かも

           単純に食べるのが辛く食べた後には体の感覚が敏感になる

 

「味噌ラーメン」…実は端っこに小さく書いてあった

         うん、おいしい!

 

本当におわり