太古の封印

 

雷が鳴り止むことはなく、風が吹き荒れる

そんな断崖が続く場所にローブを纏った一人の男が何かを探すように歩き回っている

 

男は崖から隔離された場所にある遺跡を見つけるとにやりと笑った

 

「ついに見つけたぞ…これで…これで僕の願いは叶う」

 

雷がその遺跡に落ちる

そして雷光が彼を映し出す。その顔は狂気に満ちていた

 

 

 

 

数日後

 

霧雨雷人が旅に出てから少しの年月が経っていた

あれからハットは幻想郷を離れ自分の世界に戻ってきていた

それからというものの彼は何かが抜けたかのように毎日を過ごしていた

 

「はぁ…こっちの事は任せたと言っても、そんな心配ないんだよなぁ」

呆れるくらいに平和な日々が続いていたので彼の仕事の依頼も全く入ってこなかった

欠伸をしながら彼は遠くを見つめていた、何かがあるわけでもないが

何もないとこうしたくなるらしい

 

「ここ最近は本当に平和だな~…」

肘を付き顔を支えぼーっとしていた

そんな彼の真後ろに人がいるとも知らずに

 

「んひぃ!?」

彼は脇を思いっきりくすぐられた

振り向くとそこには最近ではもう見慣れた顔であるキミドが居た

 

「キミドか。何のようだ?依頼でもするか?」

「…あんたに呼び出されたから来たはずなんだけど」

二人の話が見事に食い違う

互いに見合うがどちらも嘘をついている目はしていなかった

 

「まぁいいわよ、もう…」

ハットの隣に並び同じように遠くを見つめる

しばらく沈黙の間が二人に続いたがキミドがハットを見つめる

 

「…どうした?」

半笑いになりながら彼は見返した

 

「あいつが居なくなったからか知らないけどあんた変わったわね」

再び彼女は遠くを見つめる、ハットはそうかもなと素っ気なく返した

これはどうにかしないとと彼女は思った

かといっても何をすればいいのか彼女にはわからなかった

 

考えているうちに地面が縦に小さく揺れた

その揺れは次第に大きくなりやがて収まった

 

「す…凄かったな今の…」

ハットはバランスを崩して倒れながらもキミドのほうを見て目を点にしながら言った

 

「えぇ…こんなところでも地震って起こるのね」

彼女は帽子を押さえ、壁につかまり何とか立っていた

ハットは言葉がこもりながらもあぁと返事をした

 

彼は勢いよく立ち上がる、久々に事件の予感がしていたのだ

それのおかげで彼の眼は以前のような輝きを取り戻していた

 

机の上に放置されていた銃を手に取ろうとしたが先にキミドが手に取った

そしてしばらくそれを持ち、細部まで観察していた

 

「キミド、それ俺の武器なんだが」

「あーそうだったの?じゃあ返すわ」

 

残念そうに彼女はハットに銃を返した

彼は受け取り家を後にしようとしていた、彼女も彼についていく

 

彼が向っていたのは博士の研究所だった

 

大抵の厄介事、事件なんかは自分の家にいるよりもここにいたほうがなだれ込んでくる

 

扉が開くと博士とハットが鉢合わせになる

 

「珍しいな、博士がそんなに慌ててるなんて」

「二人ともいい所に来たね!話があるんだ」

博士が大急ぎで研究所の中に戻る

ハットとキミドは何が起きたのかよくわからず彼女の後に続いた

 

中に入りまず目に入ったのは荒れた研究所だった

資料は散乱し、地面にはガラスの破片が散らばっていた

 

「空き巣にでも入られたのか?」

「はは…まぁね…一昨日に」

博士は図星だったらしく苦笑いして答えた

一人暮らしなんだから気をつけとけよとハットは思った

 

「何か盗まれた物とかないのか?」

ガラス片を掃除しながらハットは博士に問う

すると彼女は何か思い当たるようなふりをする

 

「そういえば…」

ごそごそと棚を漁る

そして何かを盗まれていたことに彼女は気が付いた

 

「…何を盗まれたんだ?」

「旧友から奪い…いや譲り受けた古文書だ」

博士が手取りでその大きさをジェスチャーする

大きさはともかくそこまで分厚くは無いようだ

そして解析が全くできずに放置していたらしい

 

「なんでこんな物を盗んだのだろうかな」

博士はそれ以外に盗まれた物がないことを確認すると椅子に座る

あれを解読出来る者がいるのならわざわざ盗む価値はあるものだろう

昔学会に出したこともあったらしいが解読不能ですぐ返却されたのだ

 

「そういえばさっきの地震は何だったの?」

キミドが二人の会話に飽き口を挟む

そういえばそっちのことの方が気になるなとハットは思った

博士は頭を掻きながら地図を広げる

 

震源地はここだ」

指を指したその先は黒く塗りつぶされたように黒い場所だった

ここからの距離もかなり離れている

 

「こんなところからあんな地震が…」

まずそこが何処なのかはっきりともしていなかったし

これだけの距離が離れていたのにもかかわらずあの大きさのものが来るとは考えれない

ハットはそう不自然に思った

 

「…今回ばかりはただの地震の可能性もあるから無理に行く必要はないぞ?」

それに…と博士は続けて話そうとするとキミドが知っているように割り込む

 

「そこはね…未開の谷と言われているの」

「未開?」

彼女によるとそこは常に暗闇に包まれ雷が決して止むことはないそうだ

それ故に開拓は全く進んでおらずこの名前が付けられたらしい

 

「なんで君がそんなことまで知っているんだ?」

博士が不思議そうにキミドに問いかける

彼女はなぜかその場所のことを知っていたようだった

 

「まぁどっちみちすることもないし行くとするか」

 

彼は研究所を後にする、キミドも後を追い出ていった

 

「って今からそこに向かうにしても数日はかかるぞ!」

博士が忠告をしに彼らを追うが既に姿は無かった

彼女は呆れ、頭を掻きながら研究所に戻って行った

 

 

未開の谷

 

ぐにゃりという音と共にハットとキミドが姿を現す

あれから一分もたたないうちに彼らはそこに到着していたのだ

というもののキミドの魔法を使っただけである

 

「ボォエ!…オゥエ!…ぅぅ」

ハットは到着と共にそれに耐え切れず吐き出した

 

「やっぱり最初は誰でも酔うのねこれ」

彼女はそんな彼を余所に辺りを見渡す

 

「…で、ここが未開の谷か?」

立ち直った彼も周りを見る

 

すると彼らの目の前に雷が落ちる

思わずハットは腰を抜かした

次の瞬間別の場所にも雷が落ちる、たまらず二人は耳を塞ぐ

 

「はは…どうやらここで間違いないようだな」

聞いた通りの環境にハットは乾いた笑いが自然と出てしまう

 

「…」

キミドは遠くを見据えていた

そこにはローブを纏っている人と人ではない何かが居た

 

そのモノ達は彼女らの視線を感じるとどこかへと飛んで消えていった

 

「今の奴らは一体…」

「…」

キミドは黙ったままポッカリと地上に大きく空いた穴を見つめていた

穴の中からは煙が上がっていた、どうやら自然的にできたものではないようだ

 

「あれが…まさかそんなはず…」

彼女はうつむき考えながらも混乱していた、手をかざしても反応がない

折角なのでハットは朝の仕返しに頬を思いっきり抓った

彼女の肌は柔らかくも水のように冷たかった

 

「イタ!?…何するのよもう!」

少し伸ばすとキミドは気が付きハットに対して頬を膨らまし怒る

その様子を見て彼は安心した、彼女も少し落ち着いたようである

 

「もしかしてさっきのあいつらとは面識でもあるのか?」

ハットは落ち着いた彼女に向かって疑問に思ったことを投げかける

手と顔を横に振りながらないと彼女は答えた

 

「ただ…あのローブの隣の奴は…知ってるのよ…」

 

彼女は自分でも不思議に思っていた

初めて来るはずのこの場所のことを始めから知っていたしそいつの事も記憶にある

一体何故なんだろうかと

 

思考を邪魔するかのように雷が遠くで落ちる音がした

 

「まぁそいつのことはここよりも俺の家…ではなく博士の所で話そうか」

「うん…」

ハットが彼女の肩を掴む、目に映る風景が凄い速度で変化していく

気が付くとそこは博士の研究所の前だった

 

「おえぇ…」

やはりそれに慣れてないのかハットは外壁にもたれるとすぐ吐いた

すぐ移動できることは便利な術だがこれだけは慣れないといけないらしい

 

その様子を博士が見ていた、ずっと二人の帰りを待っていたらしい

 

目の前に突然現れた彼らには驚き、キミドにどうやったのか言及したが軽くあしらわれ不満を顔に出しつつも彼女らを研究所の中まで招き入れる

 

博士は彼らを席に案内するととりあえずお茶を淹れた

 

「で、結局あの地震は自然に発生したものだったのか?」

博士は席についた彼らに淹れてきたお茶を差し出す

「多分自然に起きたものじゃない」

ハットはお茶をすすりながら、気難しい顔をしているキミドを指さす

 

「…彼女は一体どうしたというんだ?」

「さぁな、ただ何か知っているようだぞ」

博士とハットがキミドに視線を向ける

すると彼女は手を前に組み語り始めた

 

 

続く