あるクリスマスの話 4

 

 

 

人里前に来たが俺は明らかな異変に気が付いた

 

黒いドームのようなものが里を包み込んでいた

 

「何だこれ…でも行かなくちゃあいつは!」

俺は中に入ろうとしたが思いっきり弾き飛ばされてしまった

 

「くっ!…はぁ!」

受け身を取り剣を思いっきり振り下ろすものの深くめり込み弾き飛ばされる

「サンダーボルト!」

電撃を放つものの吸収されてしまう

 

 

「はぁ…はぁ…」

あれから色々試したが状況がピクリとも動くことはない

俺は自分の無力さを恨みガクッと膝をついた

 

ぼとっ

 

その時懐からさっき急いで持ってきていたミニ八卦炉が転げ落ちた

 

俺はそれを手に取る。そして自身の持つこの剣と照らし合わせて見てみる

 

「まさか…!!!」

もうこれしかないと思い俺は八卦炉を剣に空いている穴にはめ込む

 

ぴったり、そうぴったりとはまったのだった

その瞬間剣に光の筋のようなものが流れ始めた

 

「…開け」

俺が命令するように言うと剣は展開し、稲妻が走るように光の刃が現れた

 

「こいつなら行ける…!」

俺は体中に走るピリピリとした力を感じていた、それ故に確信出来た

 

俺は黒い壁に向かって走り、切り下す

すると見事にドームが切り裂かれ入口が出来た。俺はその入り口に突っ込んだ

黒の空間を切り裂きながら進んでいくと終わりが見えてきた

 

黒のドームの中を抜けると人里の中に出た

だが異様な光景がそこには広がっていた

 

人は誰もいなく、人の形をした影がうろうろしていた

 

「…あいつは大丈夫だろうか」

影共はこちらを認知すると一斉に襲い掛かってきた

 

 

俺は試しがてらに影を薙ぎ払う。影共は砂のように消えていった

 

辺りを見渡してみるもあいつの姿はない

すると遠くから銃声が聞こえてきた。間違いない、あいつはそこで戦っている

俺は銃声がする方向に向かうのであった

 

途中襲ってくる影は全て切り捨て、段々銃声が近づいてきた

 

「ハット!」

あいつは影共に囲まれていた。銃撃は当たってはいるのだがすぐ再生していた

「ってのんきに観察してる場合じゃねぇ!」

俺は影共の目の前まで踏み込み流れるように全ての影を切り裂く

斬られた影から順々に消えていった

 

「ハット、大丈夫か!」

俺は呆気にとられてしりもちをついている彼に手を差し伸べる

 

「…助けられてばっかりだな、俺」

恥ずかしそうに手をつかむと立ち上がった

そして俺の握っている剣をまじまじと見る

 

「さっきまでいくら撃っても倒せなかったあの影共を倒すとは流石神剣のレプリカだ」

倒した…というのとは少し感覚が違った気がするが確かにこいつは凄いな…

 

 

ぱんっぱんっとどこかから拍手の音が聞こえてくる

 

「操っていた影のコントロールが切れて何事かと思って見に来たが…貴様らか」

奴、大久保が上から俺らを見下ろしていた

前とはどことなく雰囲気が違ったように感じられた

何というか殺気…に近いものだと思う

 

「やはり始末しておくべきだな」

俺らは構える

この前みたいなヘマは真正面の勝負ならもう通用しないが今回は訳が違う

周りには大勢の影…あいつが操っているのだろう

流石に影の対応をしながら戦うのは難しいな…

 

「雷人、あいつは俺に任せてほしい」

ハットが真剣な眼差しで俺を見つめてきた

「…ダメと言っても聞かなさそうだが」

 

ハットが一歩前に出て奴に向かって発砲する、銃弾は髪を掠めた

奴がゆらりとその場を離れる、まるで誘い込むかのように

それに乗るようにハットは奴を追いかけていった

 

 

こっちはこっちでどっかで見たことある氷精の影が迫ってきていた

 

「はぁ!」

冷気をを帯びた弾幕を避け切り下した

他の影同様あっさり消えた

 

他にも色々見たことのある顔が勢ぞろいしていた

 

「これは穏やかじゃないな…」

物量に圧倒されながらも俺は剣を構えた

 

 

同刻 ハットたち

 

「へっ…お前みたいな奴俺は好きだぜ」

大久保と対峙した俺はまずそう言った

 

「それはそれは、まさか人から好かれるとはね」

「お前みたいなやつはブッ飛ばしがいがあるからな!」

 

「ふふ、俺を吹っ飛ばすか、面白いやってみろ」

大久保は棒立ちしている。俺は加速をつけて思いっきり腹を殴った

 

「どうした?」

俺の拳は思いっきり掴まれていた、ぐぐぐっと力を入れられて思わず蹴りが出た

 

それはクリーンヒットしたがびくともしていなかった

俺は少し怖くなった

 

「お前…人間…ではなさそうだけど」

「俺は人間だよ、ただの人間ではないけどね」

「そうかい…じゃあ遠慮は必要ないな!」

 

コートの中からコンパクトなシリンダーを取り出し銃に取り付ける

俺の扱う武器…この魔銃カラードは魔力を玉に変換して放つ魔具だ

玉に貫通能力がない代わりに様々な属性魔法を銃弾として放てるってもんだ

 

「…いくぞ」

正面から向かい、横の家の壁を蹴り上げ相手の頭上から水属性の弾丸を浴びせる

 

「面白い動きをするな…だが」

やはり効果は薄かった。わかりきっているからこそ避けないのか…

それとも目が付いて行ってないのか、いやそれはないか

後ろに着地し氷属性の弾丸を放った

 

それは見事に直撃し相手は凍り付いた

 

「意外と効いちゃったか?」

俺は疑いつつも氷の中心に向かって金属性の弾丸を放った

氷は砕け散ったがあいつの姿はそこにはなかった

 

「何処だ!?」

俺は周りを見渡したがあいつの姿はどこにもなかった

 

「ここだ」

目の前から声がした、俺が向く頃には腹部に強烈な痛みを感じていた

黒い槍で刺されていた

 

「ごふっ!…がっ!…」

吐血した、そして中に入っている槍をぐりぐり回してくる

「痛いが…隙だらけだぜ!」

俺はシリンダーに残っている全ての魔力を一つの玉に濃縮させそれを思いっきりぶつけた

流石に効いたのかあいつも吹き飛ばされ壁に打ち付けられていた

俺は刺さっていた槍を外しその場を離れた

 

「数分休めばこの程度の傷…」

俺は屋根の上の看板の裏に身を潜めていた

幸いなことに貫通はしていなかったようだ、これくらいなら休めば治る

俺は空になったシリンダーを外し、シリンダーのストック数を数えた

 

「残り三つか…ちと厳しいな」

そんな時雷人から貰ってたナイフが目に映った、何の変哲もないナイフだ

雷人曰く俺の影に刺さっていたものらしい

 

「あまり好きじゃないんだよなぁ近接戦は」

ナイフに映った自分に向かって独り言をつぶやく

この時にはもう腹部の傷は塞がっていた

 

「…」

俺はさっきまであいつが打ち付けられていた壁を凝視する

あいつの姿はなかった

 

俺は地面に降り立った

 

その瞬間後ろからあの時のようにナイフが放たれていた

俺はとっさの思いで銃撃を放った

 

 

「流石に三度目は通用しないか」

 

上空から話しかけられた。見上げるとあいつの姿が少し変わっていた

具体的に言うと影で出来た翼が生えていた

 

「なめてもらっちゃ困るな、そんな単純な事がそう何度も通用すると思うなよ」

銃撃によって弾かれたナイフを拾い、相手に向ける

 

そこから第二ラウンドが始まった 

 

 

「正直ここまで手こずるとは思わなかったぞ…」

「ぐっ…」

さ…さっきとまでは動きが違う…

翼の生えた姿になってからスピードが格段に上がっていやがる…

正直今のままだと防戦一方だな…

 

そう思いながら俺はコートを脱ぎ捨てた

ガシャンと色々なものが落ちる音がコートの中からした

 

「ほう、貴様も本気は出していなかったようだな」

「その言い方だとお前もなのかよ…」

 

呆れつつも俺はナイフを構える

 

「はっ!」

空を飛べない俺は壁を蹴り上げ、屋根に飛び移りあいつと戦っていた

こんな時俺も何か攻撃的な能力があれば…と思ってしまう

 

ナイフとナイフが重なり合い、勝負は互角だった

むしろこちらの動きに空いては若干ついてこれてないのか

攻撃が何度も入った

 

「はぁ…はぁ…ちょこまかとぉ…!」

あいつは明らかに息が上がっていた

一瞬立ち止まったその瞬間を俺は逃さなかった

 

 地面を蹴り上げ上空にいるあいつの腕を斬りとばした

「ぐあぁぁ!きっ…貴様あぁぁ!」

 

力を維持できなかったのか翼が消滅し、あいつは地面に落ちた

 

「どうだ?降参するか?」

俺はうずくまっている大久保に詰め寄る

こいつは苦痛に顔を歪めていたものの微かに笑っていた

 

「はぁはぁ…くっ…ふふ…なんで貴様は…あれだけの動きをして息一つ乱さない!」

明らかに余裕のない顔をしている割にどうでもよいことを聞いてきた

 

「まぁ…再生能力の応用だが」

俺はナイフを突きつけつつも答えた、今となっては隠すことでもなかった

 

「ふ…ふふ…貴様は変わった能力を持って…いるんだな」

声になっていなかったがその後も何か言っていたような気もした

 

「でだ、降参するのか?」

「しな…いさ」

不気味な笑いをしながらこいつはそう答えた

じゃあ仕方ないか、とナイフを首に刺そうとしたが

何者かに腕を捕まえられた

 

「誰だ?」

後ろを振り向くとどっかで見た鬼のような影が俺の腕を掴んでいた

 

「邪魔するな!」

蹴り飛ばした後にある異変に気が付いた

 

「ふ…ふははは、最後の最後で詰めが甘かったな…ハット…」

奴は笑っていた

「身体が…動か…」

身体が動かなかった、奴はゆっくりとナイフを持ちながら近づいてくる

自分の最後の最後の甘さを俺は悔やんだ

そう思いながらも俺の意識はそこで途絶えた

 

 

同刻

 

 

「とりあえず片付いたが…あいつ大丈夫か?」

俺は全ての影の相手が終わり、ハットの行った方向へ急いで駆け付けることにした

 

少し広い通りに出ると 

ところどころ戦闘の跡がみられるところに俺は行きついた

 

「遅かったじゃないか、霧雨」

奴は俺の前方に立っていた、何故か腕がなかったがあいつがやったのだろうか

その割にはぴんぴんしていた

 

「ハットの奴はどこに行った」

「ふふ、あいつならこの先で寝ているさ、覚めることはないだろうがな」

「いやぁ、中々強かったけど甘ちゃんだったね」

奴は続けざまにそう言った

 

「貴様…」

刃が自身の怒りに共鳴するように長く、鋭くなった

 

「…ハットに一体何をした!!!」

俺は感情のままに奴を見えない速度で奴を切り払った

 

「ん?…今何かしたかい?」

振り向くとあいつは驚いてはいたが傷は一つもついていなかった

俺は自身の持つ剣を改めて見る、確かに刃はこれまでにないほど鋭い

なのになんで…何で切れなかったんだ

 

現実に起きたことを俺は認めたくなかった。憎いあいつが倒せないなんて

何度も切り付けていくうちにあいつもこの剣が切れないことが分かったらしく

 

「どうした?その程度か…貴様の力は」

胸倉をつかまれる

「このまま殺すのもいいが…ふふ、ふはははは」

奴は俺を上へ放り投げる

俺が投げられながらも目に出来たのは魔理沙の影が俺に向かって

マスタースパークを放っているところであった

 

 俺はそのまま意識を失った

 

 

俺は気が付くとどこかの森の中に倒れていた

どこまで吹き飛ばされたかわからないが重なる木と、この柔らかい土のおかげで

命は何とかなっていた、だが体のあちこちが痛かった

 

ジジ…

 

剣にはまっている八卦炉が煙を発していた、俺は急いでそれを外す

すると剣は元の形に戻っていた。

 

剣を見つめると俺はふと剣に宿っていた奴のことが気になった

「…起きてるか?」

『…何用だ』

剣に向かって喋ると意外と早く返答が来た

 

「この剣の力を解放したのになんであいつは切れなかったんだ?」

 

『…それは剣の解放は使用する媒体によって異なる力を引き出すからだ。汝が使用した媒体は魔、名の通り魔だけを斬り、絶つ力…』

 

淡々と説明をさせられた。つまり人は切れないという事か

つまりあいつは人間だったのか…

 

『そしてその媒体は流動する力に耐えれなかった』

煙が上がって使い物にならなくなったミニ八卦炉を見つめる

今思えば魔理沙には悪いことをしたな…

 

「…お前はずっと寝てたのか?」

『あぁ…だが眠りに付きとも何があったかは我には全て見えておる』

 

その後、必要な時になったら動くとよくわからない事を言いまた眠りについた

 

「…おーい」

剣を叩くと不機嫌そうに起きてきた、どうやらこちらが話しかければいつでも起き

逆に自発的に起きることは少ないようだ

正直その方が気が楽だからいいか

 

忘れていたが俺はさっきまで人里であったことを思い出す

早く戻ろうにもここが何処だかよくわかっていなかった

 

道なき道を進むと森が開けてきた

そこで目に映ったのは少し小さく、古い館のような建物だった

妙に懐かしい雰囲気があった

そして俺はそこに吸い込まれるように入っていった

 

 

 

つづく