あるクリスマスの話 3

 

 

 

 

「…久々だな、ここに来るのは」

あぁ、とハットが返事をした

俺らは訳があってここ(幻想郷)に久しぶりにやってきた

その訳っていうのが・・・・・・・・・

 

 

一時間前

 

博士に影のサンプルを渡し俺らは食事をとっていた

「にしても博士の奴凄い顔してたな」

ハットが思い出し笑いをしながら話かけてきた

「確かにな…あのまさしく目を輝かせるって表現の顔は久しぶりに見たぜ」

 

俺らがそんな話を続けていたら博士がやってきた

 

「ハット、雷人、あの妙な黒いのの正体がわかったぞ」

博士は続けて言う

「あれはハットの言う影とやらとは違うもんだった、かなり高濃度の魔力の塊だ」

博士が結果を提示してくれたが難しくてよくわからなかった

 

「ただ…」

『ただ?』

博士が結果の一部を指差した、黒いもやもやから若干赤い部分がはみ出た図だった

「影ではないが…限りなくそれに近いものだ」

「そんなことがあるのか!?」

ハットも俺も驚いた、影を人工的に作ったというのか?

そんなことありえない、と思いつつも出来そうな奴には心当たりはあった

 

博士は椅子に腰かけると更に重要なことを話した

「そしてこの影もどきには幻想郷特有の魔力が多く含まれていた、これが何を意味するか分かるね?」

「あぁ!…」

ハットはにやつき拳を握りながら返事をした

「そいつは幻想郷からこっちに連れられてきたってことか」

うん、と博士が頷いた

 

 

「準備はいいかい?」

博士はミニスキマ発生装置を起動している

俺は嫌な胸騒ぎがした

 

暫くするとスキマが現れた

これは普通にいけない技術なんじゃないのかと俺は密かに思った

「じゃあ先に行ってるからな~」

ハットが先に飛び込んでいった

「ちょっ…置いてくな!」

俺も続いて飛び込んだ

暫くすると光が差してきた、どうやら出口が近いようだ

 

ボスンッ

 

俺は地面にしりもちをついた

「ははっ、雷人遅いぞ!」

どうやらハットもいるようだし無事についたようだ

俺らはあたりを見渡した

 

「…久々だな、ここに来るのは」

 

…とこういうことがあって俺らはここへ来た

 

 

「妙だな」

ハットが空を見上げる

太陽が昇っており雲も流れる至って普通の空だ

そして周りに聞き耳を立てた

「…誰もいないな」

ここが平原なんかだったら誰もいないのは普通であろう

しかし俺らが入ったスキマは一応博麗神社に繋がっていたのだ

 

「駄目だ…誰もいねぇ」

中を隅々探したが巫女も鬼も誰もいなかった

 

「…」

「とりあえず人里にでも行けば誰かいるんじゃないのか?」

考え込んでいた俺にハットが提案してきた

「今はそれしかすることがないな…」

 

 

「まぁ待ちなよ」

俺らが人里に向かおうとすると前に黒い修道服を着ている青年が立っていた

 

「何者だ!?」

俺は武器を構えるとまぁまぁと構えを解くように促された

謎の青年は続けざまに言った

「そうだな、自己紹介をしようか」

「俺の名は大久保マサキ。いずれこの世界を手中に収める男だ」

ふふ、と笑いながら冗談でも無いようにその内容を青年は言った

 

 俺らは理解が出来ず固まっていた

 

「理解できないよなぁ?いきなりこんなこと言われたら」

奴は両手を肩ほど挙げ首を横に振った

 

「まぁでもこの世界の違和感には貴様らも気づいているだろ?この世界の異変にさ」

「あぁ…まるで時が止まったかのように静かだな」

ハットがキッっと睨みつけいつもより低い声で返した

 

「ひょっとしてだが…お前があの時俺を襲った奴なんだろ?…大久保マサキ」

ハットがガチャッと銃を構える

「ふふ、その通りだ。あの時邪魔さえ入らなければお前も…」

奴は一瞬表情が歪んだがすぐに元の表情に戻った

 

「本来なら貴様らなぞすぐに殺してやりたいがせっかくだ、この世界の有様をその目に焼き付けておけ。」

奴はそういうと何もせずその場から立ち去ろうとした

 

「待て!」

ハットは奴の足元に向かって威嚇射撃をした

驚いたようにこちらを見た後また振り返りそのまま歩き始めた

 

「逃がすかよ!」

ハットが追いかけようとしたがスッっと足元に向かってナイフが放たれ

それをハットは避けた

 

だがハットの動きはピタッと止まった

 

「う…この感じ…前と…同じだ…」

何とか口だけは動くようだが徐々にそこも止まり始めていた

これがハットの言っていた現象か…

 

「ふふ、早く助けてあげたらどうだい?霧雨」

奴は決して振り返らず俺にそう言った

その後高笑いをしながらどこかへ消えていった

 

俺はハットの元に駆け寄り何が原因で動けないのか探ってみた

よく見るとさっきハットが避けたナイフが彼の影の部分に刺さっている

とりあえず抜いてみたが普通のナイフであった

 

「…っち」

「大丈夫か?」

俺は舌打ちするハットを心配していた。またあいつに挑んで今度こそ死にそうな気がしたからだ

 

「あ…あぁとりあえず大丈夫だ。」

肩を回し、手を鳴らす。興奮でハットは笑いながら震えていた

 

「あいつの能力、影に関係する何かだろうな」

俺は手にさっきまで影に刺さっていたナイフを持っていた

それをハットは受け取りコートの中に収めた

 

「だが今度対峙するときは…こうはいかねぇぞ」

ハットは自身の持つ銃を見ながら闘志を固めていた

 

あれからしばらく時間がたっていた

俺らはこれからとりあえずどうするか意見を出し合うことにした

 

「とりあえず魔理沙の事が心配だな…」

「俺は人里の事が気になる」

俺らの意見は見事に対立した

 

それから約一時間話しあった

辺りはもう夜の暗闇に突入していた

 

「…でいいな?」

「あぁ、人里にまず行く。そのあと魔理沙のところにいく」

俺が先に魔理沙の所に行こうと強く押すと二手に別れようとうるさかったので

ハットの用件から済ますことにした

 

 

「…なんだいるじゃないか。人」

人里についたあと俺が見たのは日常を過ごしている人達だった

だが妙にみんなの表情が暗かった

 

通りを行くが人間しかいなかった

 

 

「まぁ夜だしな」

俺らは里を後にしようとした

ハットは何か気になっていたように里を見つめていたが

俺が急かすと見るのを止めついてきた

そして俺らは魔法の森に向かう

 

 

魔法の森の中を進んで俺はあることに気が付いた

 

昨日夢で見た森と似ていると。それと同時にあの夢の事が頭を過ぎる

あれは夢だったはずだ そう自分に言い聞かせた

 

しばらく進むと霧雨魔法店が見えてきた。灯りはついていない

 

「じゃまするぜー」

ハットが中に入っていった

と思ったらすぐ出てきて慌てふためいていた

 

「ま、ままままままま」

「わかった。」

魔理沙に何かあったのだと思い俺は空いている扉の中に入る

 

「!!!」

 

俺が目にしたのはまるで地面に倒れている魔理沙の姿だった

 

「何てことだ…」

ハットがほっぺをツンツンしても髪を引っ張っても無反応であった

何者かに襲撃されたのか若干部屋が荒れていたでわかった

 

身体に触れてみると普通に体温はあった、つまり生きてはいた訳だ

 

「風邪を引くといけないからとりあえず寝かせておこうか」

そういって部屋まで運んで寝かせ、隣接している昔俺が使っていた部屋に寝泊りすることにした

暫くの間、沈黙の間が二人の中で続いていた

 

「…皆魔理沙の奴みたいな感じになっちゃったのかな」

ハットが外を見ながらボソッと喋った

ハットはどちらかというと幻想郷とはあまり関わりがなかった方だが

やはり想い入れはあったようだ

 

「やめだやめ!…とりあえず今日は疲れたから寝よう!」

外を見るのを止めハットは気持ちを切り替えたかのように眠った

 

「ふぁぁあ…確かに疲れた」

俺も疲れていたのでベッドに倒れこむように眠った

 

 

 

「…ん?…朝か…」

朝日が俺の顔を照らし、そして俺は起床した

なんか悪い夢を見た気もするが全く覚えていなかい

 

寝違えたのか首が痛かった

 

ハットが寝ていた方を見たが彼の姿はなかった

下に降りたもののハットの姿はなく

あまり使われていない机にミニ八卦炉で押さえてあった置手紙を見つけた

 

内容はやはり人里の事が気になるので悪いが一人で見に行ってくるというものである

 

「あいつ…!」

俺はミニ八卦炉を懐にしまい剣を握り大急ぎで人里に向かった

ひょっとするとここに来た時に感じたあの胸騒ぎは…

 俺は生きていることを願いつつ急いだ

 

 

つづく