Sweet nightmare

 

「ここは…夢なのか?」

 

目を覚まし、木々に囲まれた事を認識した上で俺は呟く

眠りにつく瞬間の記憶は確かにあった

 

頭上を風が通る、いつも被っている帽子が無いことに気が付いたのはこの時だ

 

「夢とはいえこれをさらけ出すのは流石になぁ…」

頭から生えている角が影となって地面に映る

隠そうとするが体の自由がきかない、仕方なくよろめきながら俺は森を進む

 

しばらく歩くとと森の中にある小さな村を発見した

 

そこには見覚えがあった、ただ詳しくは思い出せなかった

中に入ろうと近づく、その瞬間。村は炎に包まれた

 

「な…何が起きているんだ!?」

足が自分の意志とは反対に前へ前へと動く。いや、これが俺の意志なのかもしれない

炎の中を進むが熱さは微塵も感じない。だが息苦しい

 

「この家は…」

ある家の前に立つと、足が止まる

この村といい、何か忘れていることがあるのではないかと俺は思う

炎に包まれている家のドアを開けようと手を掛けるようとした

 

「…誰かいるのか?」

後ろから感じ取った気配に声を掛ける

返事はなく振り向く、その時に見た物が何かは覚えてないが俺は目を覚ました

 

「…随分とうなされてたようだが大丈夫か?」

勢いよく起き上がると、目の前にはガタイのいい男が立っている

 

ゲイツ、そっちから来るとは珍しいこともあるんだな」

彼の名前だ、町では俺らみたいな奴らに丁度いい仕事を与えてくれる人だ

顔は徐々に老けてきているがその体は衰えることを知らない…凄い漢だ

 

「まぁ…ちとやばいことがあってだな」

「それで俺に頼みに来たという事か」

ゲイツは真剣な眼差しで頷く、それはサングラス越しにも分かるものだった

 

「…実はだな、消えちまったんだよ」

「消えた…何が消えたんだ?」

首を傾げるとゲイツは少し間を置いて怖い表情で物を言う

 

「町の人々が…だ」

俺はその規模に驚き、一瞬意識が遠のく。

ゲイツは冗談を言っている顔では無いことは解っている

だが、いきなり過ぎて俺はびっくりしている

 

「あれはだ、一週間前の話だ…」

ゲイツは語り始める、微かに彼の元を訪ねる人が減ったらしい

人は段々と少なくなり彼は行動に移した

 

「…何やってんだアイツ」

それはある夜の話

ゲイツはよろめきながら町の外に出ていこうとする男を尾行していた

こつ…こつ…と後ろから遅い足音が聞こえる。振り向くとそこにはまた別の男が同じようによろめきながら歩いている、顔を見ると目は開いていなかった

 

 

 

「ほうほう…それでどうしたんだ?」

俺は話も終わりに掛かってきたと思いゲイツを急かす

 

「どうしようもできなかったよ…俺にはな」

彼の言うには、声を掛けても無反応でいくら叩こうが動じなかったらしい

それどころかいつの間にか自室のベットで目を覚ましたらしい

 

「…夢だったんじゃないのか?」

「かもな」

真剣な表情が解かれ一瞬ガクッと椅子から転げ落ちしそうになる

 

「だがぁ…人が消えてるのは事実なんだ、だからハットに頼みたいんだ」

ゲイツは深く腰を据える、最近は特に依頼も入ってこなかったから断る理由なんてないんだよなぁ…

 

小さく頷くとゲイツはよしきた、と机をたたき立ち上がる

先に外に出て行った、俺も掛けてあったコートを羽織る

あいつが来た時用に俺は書置きを残しておく

 

外に出て扉に鍵を掛ける。そして近くの土を掘り、中に鍵を埋める

 

その様子を不思議そうに眺めているゲイツに気が付いた、俺は急ぎ足で彼の元に向かう

この仕事、そう簡単に終わらせてくれない気がする

 

俺は町へ案内するゲイツの背中を追いかける

嫌な予感はしていたが、いつもと同じようにやるだけだ

 

ぐっと握り絞めた手を見つつ俺はそう思った

町はもうすぐそこだった

 

 

 

 

「…」

木陰から女性が姿を現しハットの住んでいる家に目をやる

地面から黒い物が湧きだす、彼女が手をかざすとそれは吸い込まれる

 

「…全く、どこ行ったのよ」

入口の前に立つと彼女は扉を思いっきり蹴り飛ばす

バタンと音を立てそれは倒れた。不機嫌そうに周りを見渡すと書置きを見つける

 

一通り流し読みするとポケットにしまう

彼女は深くため息を吐き捨て外に出る、そして遠く見据える

その先には町はずれの廃墟があった。彼女はそこに向かう事にした

 

 

続く