年越し

 

「あーねんまつ」

ハットは部屋着で炬燵に入り一人でそばをすすりながら呟く

珍しく一人で過ごそうとしている年越しは彼にとって少し寂しいものであった

 

「…まぁこれが普通なんだよな」

言葉ではそう言っているが心は正直であり、物足りなく感じる

その時、窓を叩く音が聞こえた。

そこに目を向けると頭に雪が被さっているアンヘルが居た

ハットは少し残念に思いながらも窓を開け彼…を部屋に入れた

 

「やぁやぁ、丁度いい時に来れたかな?」

手に持っている袋を炬燵の上に置くと中に入り暖を取る

「まぁ…」

気の無い返事をするもアンヘルは優しく笑う

 

「…なんで来てくれたんだ?」

悪く思いハットは残っていたそばを差し出しながら聞いた

それをアンヘルは嬉しそうに食べる

 

「昔みたいに一緒に年を越したいと思ってね」

そばを平らげると、間をおいて恥ずかしそうに顔を押さえながらアンヘルは言った

 

「そういう事か…いいよ」

頭を掻きながらそう言うとアンヘルは喜びながら隣に座り

髪の毛が乱れるまで頭を撫でる。ハットも満更ではなく受け止める

 

「…あんたたち仲好さそうね」

帽子の代わりに丼を被ったキミドがいつの間にか部屋の入り口に立っていた

不貞腐れながらも炬燵の中に入る

 

「い、いや別にこいつは…」

ハットが慌てて弁明しようとするがその様子を見てキミドは冷たい目線を向ける

その様子を見かねたアンヘルが二人の間に介入する

 

「勘違いしているようだけれど、私はこの子の育ての親だ」

胸を張ってアンヘルは言い放つ

あまりにも唐突な告白にキミドは呆気にとられる。ハットは俯く

 

「お、親ってあの親!?」

どうにも認められない様子でアンヘルに迫るキミド

すると彼は懐から一枚の写真を取り出してキミドに見せる

 

「へぇ…これは中々♪」

ハットはその写真に何が写っていたか見せてもらうことが無かった

無理やり奪い取ろうとするとアンヘルに取り押さえられる

 

「気に入ったのならあげるよ?」

そう言われるとキミドはさっとポケットにその写真をしまう

アンヘルがハットを放すとキミドから写真を取り返そうと

炬燵の周りをぐるぐる回るキミドを追いかける

 

そのハットの様子を見てアンヘルはどこか荷が下りたかのように肩を下ろす

「本当に…彼女といる時の君は活き活きとしているね」

彼の小さな呟きはハット達の足音にかき消される

 

 

「ふぅ…全くお前というやつは」

キミドをやっとのことで取り押さえるころには年は明けていた

写真が入っているポケットに手を入れると写真の感触がある。取り上げてそれを見る

 

「…」

それはいたって普通な少年期の彼の写真であった、アンヘルに抱き着きながら眠っている写真であった、恥ずかしくなり赤面する

 

「…ほら、来なさいよ♪」

腕を前に開きいつでも抱き着いてこいと言わんばかりの姿勢になる

「い、いやいいよ…それは子供の時の写真だしさ」

「いいじゃんいいじゃん♪いつまでたってもあんたは子供なんだしさ」

それも拒むとキミドはハットに飛び掛かる、避けると今度はハットが逃げキミドが追いかけるループが炬燵の周りで繰り広げられる

 

「仲がいいことはいいんだが…」

その光景を眺めながらアンヘルは呆れ、言った

「もう少し周りの眼も気にしてくれないかな~…」

 

誰一人として朝まで年を越えたことに気が付く者はいなかった

 

おわり。明けましておめでとう