Sweet nightmere 2

 

彼女が廃墟と化した屋敷に着く頃には既に日は落ちていた

冷たい風が通り過ぎる、そこはおぞましい雰囲気を発していた

 

「さて…あいつが居る場所ってのはここね」

仕舞っていたおいた紙を取り出す。

そこにはこの廃墟の場所と仕事の内容について書いてあった

 

黒い服装に身を包んだ女性の名はキミド、影でありながら自我を持つ。

誰の影なのかは本人もわかっていない

 

「…行きましょうか」

不思議な形をした銃を構えながらゆっくりと彼女は屋敷への道を歩み進む

入口を開けると彼女はいきなり倒れそうになる、だが何とか膝をつく

今にも眠ってしまいそうであったが口を押え立ち上がる

 

「(不思議な匂い…あまり吸い込まないようにしないと)」

館内は薄暗く甘い香水のような匂いが充満していた

持ってきたはずの懐中電灯が何所かに消えていることに気が付く

引き返そうとしたが固く閉じられた扉は開くことがない

 

「どういう事かしら…」

不思議に思いつつも進むしかないと感じ、壁伝いに進んでいく

 

しばらく進むも先が見えない

「おかしいわね…外観はこんなに大きくなかったはずなのに」

彼女はあることに気が付く、甘い匂いはしなくなっていたのだ

 

再び歩み始めようとすると目の前の暗闇で一瞬何かが光る

ピチャリと水が床に滴るような音も聞こえる

 

「な、何?…」

銃を暗闇に向けると中から触手が伸び、彼女の手首をがっちり掴む

振りほどこうにも触手とは思えないほどの力で手首を締め付けられ、踏ん張るものの徐々に暗闇に引きずり込まれていく

 

「くっ…放しなさいよ、このっ!!!」

必死に抵抗をするも引きずり込もうとする力は衰えることはない

そして腕の触手に集中していた彼女は床を這いずり足を狙う触手に気が付くことが出来なかった。

 

「キャッ!」

足に巻きついた触手に引っ張られ彼女はバランスを崩してしまう

そして、彼女は暗闇の中に飲み込まれていった。その様子を見ている者が一人、彼女のあとを追いかける

 

「ん…うぅん…」

キミドが目を覚ました時、足と腕全てを鎖で縛られていた

彼女は一瞬戸惑うもののすぐに今自分が置かれている状況を理解する

抜け出そうとするも鎖が擦れ合う音だけが暗闇の中に響くだけだった

 

「…お目覚め、いや…まだ目覚めてはいないか」

キミドの見つめる先には一人の女性が居た、黒い尾や羽が生え露出の激しい黒の衣服を身に纏っているその姿は一般的な魔を彷彿とさせていた

 

ゆったりと近づいてくるその姿は不気味であった

鎖を振りほどこうとするも全く外れない、その様子を見て薄く笑みを浮かべる

既に彼女はキミドの眼の前まで来ていた、そして顎をくいっと指で持ち上げる

 

「出せないでしょ?…いつもの力がね」

キミド自身が信じられなかったがその通りであった、普段なら出来る変形、魔法、全ていつものと同じように彼女は試行を繰り返す、だがどれも不発と終ってしまった

 

キミドは指を振り払うと睨みつける

「あんた一体何者なのよ、そして私に何をしたの?」

普段喋るより深くドスの効いた声で魔の姿の者に話しかける

 

「私?私はただの夢魔…淫魔とも言われているね」

足を組み空中に座り、尾を振わせながらその者は答えた。

淫魔という言葉にキミドは反応する、その様子を見て夢魔はニヤつく

 

「あ、そうそう。君は夢を見ているだけだよ」

そう言われるとキミドは少し安心したのか表情が緩くなる、彼女が力を発揮できないことも夢の中だからという事、そして夢は覚めるという事

 

「だけど君は夢から覚めることはない」

 その一言を聞きキミドはぞっとする、夢魔はキミドを目の前にして涎を垂らしている

その目は餌を狙うような野獣の目つきをしていた、涎を拭き取ると、キミドの着ている服のボタンを一つ一つ外していく

 

「な…何してんのよ!!!」

必死に抵抗するが、とうとう上着を脱がされ黒いブラとところどころ黒く変色している素肌を晒してしまう。キミドは恥ずかしさのあまり顔を赤らめる

「この方が”食べやすい”でしょ?」

 

「た…食べる!?」

赤く染まった顔が青ざめる、外れる筈がない鎖を解こうと必死に手を動かす様を見て夢魔は少し困った顔をする

「誤解だよ、私が食べるのは君の夢…おいしそうな淫夢」 

 お腹をさっと摩りながら夢魔はキミドにそう言った。キミドはムスッとしながら夢魔を睨むが彼女の視界は徐々に霞んでいく

 

しばらくするとキミドは目を閉じて眠ってしまった、夢の中で。

 

「…」

眠ったその体を目の前にして夢魔はじゅるりと垂れた涎を飲む

そして彼女は夢を食べ始めようとした

 

 

その時彼女の頬に何かが掠った

 

「誰?…これからいいところだっていうのに」

 掠った所を痛そうに摩りながら何かが放たれた方向であろう後ろを振り向く

そこには古びたフードを深く被った男が居た

 

「そこまでだ。夢魔…お前はここで絶つ!」

刀を抜くと男のその言葉に反応するかのように刀の刃が電気を帯びる

バチバチと飛び散る火花は戦いの合図であった

 

続く